空港はいい。国によって独特な雰囲気がただよっている。気温、湿度、音も違うし、何と言っても匂いが違う。僕はNYのJFK空港のトイレの匂いが好きだ。
初めて行ったのは確か1985年ぐらいだったと思う。消臭ボールという名前なのだろうか(女子は見たことないかもしれないが)、あの匂いなので鼻にツンとくるような、お世辞にも良い香りとは言い難いものなのだ。
だから好きというより僕個人の初体験の思い出なだけなのだが。あの匂いは初めて行った強烈なNYのカルチャーショックとともに僕の細胞の中に残っている。
「ホセ・マルティ国際空港」
キューバの国際空港の名前だ。ホセ・マルティというのはキューバの有名な革命家の名前だ。日本で言えば、さながら坂本龍馬国際空港とでも言えばよいのだろうか。
チェやカストロを知っている人は多いだろうがホセ・マルティを知っている日本人は少ないかもしれない。ちなみに僕はチェも好きだがカミーロが好きだ。カミーロも知らない人が多いと思うが、チェよりも男前かもしれない。カストロ、チェと同じメンバーだ。命がけで覚悟を決めた男たちは男が惚れるぐらいカッコイイものだ。
さてどこの国でも税関を通り抜け到着ロビーに出ようとすると必ずネームボードを掲げた人たちが待ち構えている。あれも空港ならではの風景だ。旅行代理店の人なのか、ドライバーなのかわからないが誰かを迎えに来ている。キューバももちろん沢山の迎えの人たちがきていた。
ボードを掲げた人が声をかけてくる。
「ミスター、スズキですか?」
日本人はスズキが多いがちょっと違う。
初めてのキューバ。知人など一人もいない。
訳あっての久しぶりの家族の再会が多いのだろうか涙を流しながら激しいハグをする人たちをみかける。お国柄なのだろう。それも日本人がやる中途半端なハグじゃなくてギューーーー、チュ、チュ、チュ、ギューーまたチューみたいなラテンなハグ。日本ではありえない風景だ。
このチューはほっぺたにチューをするべシートと呼ばれる挨拶。のちにこのべシートは絶対に欠かせないものだと教えられる。今回の写真集の主人公の一人でもあるママは、いつも「マッコートーー!」と嬉しそうな、本当に嬉しそうな表情で、右、左、右と三回べシートしてくれる。
それにしても暑い。湿気も多くムワーンとした熱気。タイとはちょっと違う湿度だ。到着ロビーは電力を節約しているのか薄暗い。これも社会主義の国っぽくて雰囲気があっていい。
到着ロビーに出たら旅人のコースは大体お決まりだ。両替してから、ぼったくられないように何かしらの交通手段で中心部へ向かう。旅人の拠り所でもある両替所で騙してくる国もあるのだが。
キューバは空港から鉄道がない。バスもなさそうなので必然的にタクシーしかセレクトの余地がない。
タクシーはキューバに行ったことがないみなさんもご存知の1950年代のクラシックカーだ。いやクラシックカーではない。ボロボロではあるが現役バリバリなのでクラシックとは呼ばないと思うのだが。
つづく…
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2017年秋、写真家・須田誠のキューバ写真集が発売決定!
WEB連載【本ができるまで】は本が完成するまでの物語。
まだまだ続きます。
この調子で書いていたら本物の本が先に完成してしまうな(笑)。
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