キューバ 写真集 本ができるまで いろは出版

WEB連載【本ができるまで】#008

【本ができるまで #008】
男性の方が声をかけてきた。
「こっちへきて見たらどうだ。おいでよ」

知らない人から声をかけられたらとりあえず一線を引くのが旅人の鉄則だ。大体、観光客に声をかけてくる輩は何かしらを企んでいるに違いない。これは万国共通だ。強盗4回、詐欺は数えられぬほど出逢ってきた僕が断言する(放浪の旅で遭った詐欺や強盗の話だけでもかなり面白いので今度どこかで書こう。今は「本ができるまで」を先に進めるとしよう)。

男性は黒人で体が大きく背も高い。腕っ節は僕の太ももぐらいあって、絶対にまともに戦ったら勝ち目がない強そうな男だ。それに反して女性は小柄で、顔もスペイン系ですごく可愛い。

旅をしている時にすべての危険性があることを避けていると旅が面白くなくなってしまう。直感を信じて行動することが大事だ。

声をかけてきた二人はカップルだし、周りには夕涼みに来ている人も沢山いるし、釣りをしている強盗というのもあまり聞いたことがないので防波堤を下りていった。糸一本を海中に垂らしているだけだが、見れば釣りであろうことはわかった。

(でもこれって釣れないよね?)と心のなかで思っていた。

と、突然男性が叫んだ!
「引っ張れ、引っ張れ! オマエも一緒に引っ張れ!」

なんだかわからないが僕も引っ張った。ナイロンの釣り糸が指に食い込んで痛い。針が岩に引っかかってるんじゃないの? 魚だったらこんなに強くないでしょ。

女性も一緒に引っ張った。
三人で引っ張った。

つづく…

2017年秋、写真家・須田誠のキューバ写真集が発売決定!

WEB連載【本ができるまで】は本が完成するまでの物語。

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