プリント解体新書 EPSON✕須田誠 エプサイト・イメージング・ギャラリー<epSITE>

2018年前半、最大の企画展です!

結論から言います。これはめちゃくちゃおもしろい! 写真をやっている人は来ないと損をします(大げさではなく本気で)。

7/7(土)には須田誠✕EPSON小澤氏のトークショーがあります!

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さて、プリント解体新書ドキュメンターリー。

まずは写真のセレクト、レタッチ、テストプリント、本番プリントの繰り返し。何度繰り返したか。何枚の紙を使ったか。今回は、テストを繰り返した上でバライタのロール紙で大きなサイズでプリント。その様子「プリント制作現場ドキュメンターリ」はこちら。

そしていよいよ、オープン前日に搬入展示開始!
展示前はこんな感じで倉庫のよう。
展示は業界屈指の「フレームマン」さん。すべてを信用してお願いできる。それもEPSON担当者の入念な準備と段取り、打ち合わせ、図面制作のおかげでもある。ありがたいですホント。

段取りどおりテキパキと作業が進められていきます。

 

脚立に乗って上部をしっかりと固定して、折り目などがつかないようにすっと下ろしてくる。下の余白の部分をどるするか。

最初は、鑑賞する人の足がひっかからないように内側に巻こうという案だったのだが、やはりストリート感を出すためにも少々荒っぽくても、破けてもよいので外側に出すことにした。

 

さあ、壁への展示が終わったらとても重要なライティングだ。写真は何から何まで光が大事になってくる。撮影、レタッチ、展示…。

「もう少々右へ、左へ…一度思いっきり下げてゆっくりと上げていって下さい」

(うーん違うな)

「今度は思いっきり上に振って、ゆっくり下げていって下さい。ちょい右で! はい!そこです!」

撮影とレタッチと照明の光、そして僕の哲学がドンピシャにシンクロした瞬間は気持ちがいいものです。

そんなやりとりを作品ごとに何度か繰り返す。脚立に乗ってるフレームマンのMさんは大変だけど文句も言わず応えてくれる。プロだ!

 

下記の大きな写真は2m50cm。

写真を見るというより是非「体感」して欲しい。写真のすべてを、あなたのつま先から頭の先までを使って感じてほしい作品です。僕はこの作品を初めて目の前にしたときにキューバのストリート・エナジーを太ももあたりでビンビンに感じました。

そして向かって右側にある小さな写真が今回のキーポイントにもなる「ダーマトによる直筆の赤字が入った写真」。

僕の直筆なので字が下手なのもそれがまたリアル。

左側の余白に【全体カタク/コントラスト強めに/少しシャープに/四角暗く】

各写真のレタッチしたい場所をまるで囲み【黒しめる/少々明るく/空おこす/カオ明るく/カゲ出す】と記載してあります。

なぜひらがなとかカタカナで書いてあるかというと、漢字を知らないからではありません(笑)。ダーマトという太い色鉛筆なので細かい字が書けないからです。

赤字の入れ方は、この個所プラスとか、アンダーでとか、具体的な数字を入れる人もいると思います。書き方はそれぞれです。

自分一人の頭の中でやっているときは良いのですが、レタッチャーなど外部に依頼する際には、言葉だけではわかりずらいこともあります。

「少々明るく」といっても、本人とレタッチャーの「少々」が違うからです。色などはもっと伝えるのが難しいですね。少々明るくしただけでも色が変わってしまいますし。

「少々マゼンタ上げて」なんていうのは、言葉だけではかなり違った色になってしまいます。

実際には、言葉以上にもっと細かくレタッチャーの小澤さんと話をしながら詰めていきます。

 

そしてこちらの額装写真。
須田誠哲学を注ぎ込んで作った作品です。

まず写真の説明をすると、遡ること2015年、元アメリカ大統領オバマ氏が、54年ぶりにキューバとの国交再開を発表しました。それはキューバにとってベルリンの壁崩壊に匹敵するほどの激動的ニュースです。その2015年のキューバのストリートで撮影した写真たちです。

F8と被写界深度を深く取り、被写体はもちろん、僕から被写体までの空気、被写体から背景までの空気、ホコリ、道のゴミ、崩壊しそうな建物、背景に写っているもの全てを取り込むべくしての撮影です。

よく見てもらうと、2015年に最新の車と1950年台の車が同時に写っていたりします。

ポージングの指示は一切せず、道の中央に立ってくれと伝えただけです。

そして額装ですが、スエードという写真ではあまり使わないマットを使用しました(僕が知る範囲ではみたことがない)。いわゆるあのスエードです。革ではありませんがが、革の裏のような素材のマット。

そして額は金と銀をあしらったヨーロッパ調のゴージャスな額を使っています。

なぜ、ストリート写真をそのような気品高い額装にしたのか。

キューバの平均月収は30ドル。日本人と比較したら雲泥の差です。東京だったら一回の飲み会もできないぐらいの金額です。

しかし彼らには誇りがありました。俺たちはキューバ人としてここで生きているんだというプライド。富じゃない、地位も名誉も関係ない。この一回きりの人生を楽しむんだという気概。

それが彼らの表情に出ています。その彼らの人間としての力強さ、キューバ人としてのプライドをマットと額で表現しています。彼らをリスペクトしてのセレクトとなりました。河田額装の河田氏と相談しながら決めました。

そして、あえての光量を落としたライティングをしました。

ぜひ来て、横から、下からとマットや額を見てみて下さい。スエードの重厚さと、渋くもきらびやかな額が光量を落とした中で効果的に作品を引き上げてくれています。

このライティングで写真に奥行きがでて立体的に見えます。F8の効果とレタッチが展示で最大限に生かされました。

 

そしてメディアの方々にお披露目をさせていただいました。こんなに多くのメディアの方に来ていただきとてもうれしく思います。お忙しい中ありがとうございました。心よりお礼申し上げます。

 

まさに、プリント解体新書!

「写真家は2度シャターを切る」
誰が言ったのか確かに言い得て妙な表現ですね。

「いくつもの過程を踏みながら写真は磨かれ、作品として唯一無二の個性をまとっていく」
ホントその通りだと思います。

 

写真をやっている方、プリントに興味のある方、写真展をやってみたい方など是非いらしてください!

●須田誠トークショー
●日時:2018年7月7日(土)15:00~(1時間程度)

●会場:エプソンイメージングギャラリー エプサイト
展示会場と同じ場所です。
https://www.epson.jp/katsuyou/photo/taiken/epsite/access/
●参加費用:
※入場無料 予約不要
※お席に限りがございます。あらかじめご了承ください。

 

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